戦後、絶滅しかけた「雄町米」
「赤磐雄町」は「雄町米」という酒造好適米(注1)からつくられます。
日本酒の味わいは、原料米によって左右されます。 山田錦は今では特に有名ですが、その山田錦の親にあたるのが雄町米です。(雄町米は原種であり、多くの酒造好適米の先祖にあたります)
雄町米は嘉永4(1851年)に現在の岡山市中区高島に当たる高島村雄町で、農業を営んでいた岸本甚造が現在の鳥取県にある大山へ参拝に行った帰り道、珍しい品種の米を見つけ、持ち帰り栽培したものです。
その後、軽部村の村長だった加賀美彰により全国の酒蔵に雄町米の素晴らしさが広められました。
雄町米を栽培するには温暖な気候、綺麗な水源、通気性の良い土壌が必要ですが、岡山の中でも特に赤磐の地はそれらが整っており、まさに雄町米を栽培するに適した土地でした。
酒づくりに適していると言われる米の条件として、大粒で心白(注2)があること、タンパク質の含有量が低いことなどが挙げられますが、雄町米は大粒で心白が大きく軟質であることから、昭和初期には「品評会で上位入賞するには雄町米で醸した吟醸酒でなければ不可能」とまで言われるほどで、かつては多くの農家によって盛んに栽培された雄町米ですが、戦後は徐々に栽培が減っていきます。
酒造好適米として有名な五百万石の草丈は85cmなのに対し、雄町米は草丈が1.6mほどにまで成長するため強い風に弱く、加えて病害虫にも弱いため農家からすると大変育てにくい品種なのです。
他の品種と比較しても栽培するのに非常に手間がかかることから戦後の機械化が進んだ農業には不向きとされました。
最盛期には栽培面積が4000ha(東京ドーム約856個分)まであった雄町米ですが、一時は6ha(東京ドーム約1個分)にまで減少したこともあり、その結果「まぼろしの米」と呼ばれるようになります。
(注1)酒づくりに適している米
(注2)米の中心にある、白い部分のこと。心白があることが酒づくりに適している条件のひとつとされている。
「まぼろしの米」を
蘇らせることに情熱をかけた、
利守酒造四代 利守忠義
左から利守忠義・製造責任者の信之・
5代蔵主の弘充
「まぼろしの米」を
蘇らせることに情熱をかけた、
利守酒造四代 利守忠義
その後、危機的な状況の雄町米を復活させる動きが1965年頃から始まります。
そのきっかけをつくったのが利守酒造四代目の利守忠義です。
利守忠義は「どんなに手間がかかっても良い」「良い米で本当の酒をつくりたい」という思いを胸に雄町米の復活を志し、多くの農家の方々にまぼろしの米と化していた雄町米を栽培していただけるようお願いに回りました。
当時の農家の人たちは機械化や化学薬品使用などによる省力稲作に慣れており、雄町米の栽培はそれほど簡単に着手できるものではありませんでしたが、地元農協や町役場、農家を訪問し続ける忠義の熱心な姿勢に賛同する人々が徐々に集まりはじめ、利守酒造が農家の所得保障を行うことで、ついに栽培がスタートしました。
そのお復活した「雄町米」で醸した大吟醸酒を「赤磐雄町」と命名し販売が始まりました。
多くの方の協力で復活した
幻の米からつくられた
赤磐雄町の魅力
多くの方の協力で復活した
幻の米からつくられた
赤磐雄町の魅力
様々な困難に立ち向かい、多くの方の協力を得てやっと復活した赤磐雄町米。そのまぼろしの米からつくられた「赤磐雄町」は濃醇(注3)辛口でフルーツの様な爽やかな香りを楽しむことができます。
冷やしてロックで飲むのも良し、少し温めてぬる燗で楽しむのも良し。
どんな飲み方をしても楽しむことができるので、季節によって、お料理によって温度帯で変化する色々な味わいをお楽しみいただけます。
また、雄町の深い味わいは和食にとても合い、魚料理はもちろん肉料理に合わせてもお料理の味を邪魔せず、肉や魚の旨味と雄町ならではの米の旨味と酸味が食を進めます。
まぼろしと呼ばれた「雄町米」ならではの米の旨味を十二分にお楽しみいただける逸品に仕上げております。
(注3)口当たりや味が濃厚でしっかりしていて、コクがあること
赤磐に生まれ、
赤磐雄町を愛した男たちの酒づくり
スペインで開催された国際日本酒コンテスト「CINVE 2022 Awards Sake」において「赤磐雄町 純米大吟醸」が”Grand-Gold”を受賞しました
(2020年、2021年に引き続き3年連続の受賞となりました。)
赤磐に生まれ、
赤磐雄町を愛した男たちの酒づくり
私たち利守酒造は「赤磐の地だからこそできる酒づくり」を信念に、酒づくりに励んでいます。
赤磐の米で、赤磐の水で、赤磐の気候風土で醸してこそできる、本物の地酒をつくりたかったのです。
一般的な酒蔵は米の栽培農家と契約し仕入れているのに対し、「酒づくりは米づくりから」という思いから雄町米の自社栽培を行っています。
全てを自社で担う一貫した酒づくりを目指して日々頑張っています。
時間も労力も、手間は一切惜しまない。赤磐の地で栽培した米を最高の形で酒にする。
そうしてできたのが赤磐雄町です。
また、日本ならではの日本酒という酒を国内のみに留まらせることなく、海外にもお届けしたいという気持ちから各国を駆け回り地道に布教活動を続けています。
一人でも多くの方に雄町の魅力を知っていただきだき、「うまい!」と思っていただけるよう日々挑戦を続けております。
是非一度でもお手にとっていただけますと幸いです。
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